水俣病と人権とチベットと朝日---さて今日は何の映画を見るか

昨日は水俣病についていろいろと調べていて、本当になにをいまさらなのだが、この事件が「昔の話」でも「終わったこと」でも決してないという現実を直視させられた。つまり現在進行形で「虐殺」と「人権蹂躙」が続いているのだが、遠いチベットの出来事とは違い、支援団体が新たに発足し東京でデモ活動をしたなんて話は聞かないし、患者の権利を!なんて右派ブロガーが声を上げたなんてことも私の知る範囲では「ない」。昨年11月にチッソがあのような決定を下したにも関わらず。

参考までに西日本新聞の連載を。
シリーズ「水俣病50年」
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/minamata/

そして噴飯モノであるチッソのサイト
水俣病問題への取り組みについて」
http://www.chisso.co.jp/topics/minamata/index.html

それにしてもこのチッソのHPはなんといったらいいのやら。酷すぎてコメントできないくらいだ。暴力団使ってユージン・スミス(水俣病に関する一連の写真で有名)ら自主交渉派を襲わせた癖に(このときユージン・スミスは片目を失う重傷を負わされた)なにが

「一部の派との間に極めて苛烈な交渉が行われました。それは、多数の暴力的支援者の座り込みによる会場封鎖の下で、威圧的言動や行動により応諾を迫られ、果ては社長以下の会社代表が88時間にわたり監禁状態に置かれるなど、交渉と言うにはほど遠いものでありました。そればかりか、多くの社員が警備中や出勤途上でしばしば暴行を受け、けが人が絶えない有様でした」

だよ。ぬけぬけとよくこんなことをかけるもんだ。このことからもチッソ側にとって「罪障感」とはなんなのかがよくわかる。50年たっても「たかが」公害問題ひとつ解決できない(しない)我が行政のなんたるすばらしきことや、と皮肉のひとつも言いたくなるが、そんなことを言えば「お前は行政を褒め称えているのか!」とお叱りを受けかねない状況が起きている。例の朝日川柳問題である。

3月21日付け朝日新聞朝刊の「朝日川柳」の欄に以下のような句が掲載されたためちょっとした話題となっている。
(このあたりhttp://koerarenaikabe.livedoor.biz/archives/51156468.htmlでも話題沸騰中)問題の句は以下のとおり。

「五輪前 どうにも邪魔な 生き仏」

どう読んでも皮肉や当てこすりにしか思えないが(中国政府の本音だろうし。でもダライラマ14世はオリンピックボイコットあるいは中止を訴えているわけではないのだけれども…)一部ネトウヨさんは鼻息荒く「アカヒの本音!」と読解力のなさを棚に上げて騒いでいるようだ。個人的には本気でそんなことを言ってるとは思えない(そうだとしたら三浦朱門センセイが推進邁進された「ゆとり教育」とやらは絶大な効力があったことになるなってそれは与太ですが)だが、本当にそうだと信じている言葉の正しい意味での“確信犯”ならば、すべからく即座に「国語表現とはなにか?」についてイチから勉強すべきである。*1

そもそもネトウヨ読解解釈法(勝手に命名)のとおりならば、(Apeman氏も指摘していたけれど)隣に掲載されていた「ヤミ専従ヤミ取引があればこそ」は朝日によるヤミ専従の肯定!ということになるし、「タクシーも道路を使うというセンス」というのは道路特定財源から国交省職員へのタクシー費用捻出の肯定、つまり朝日新聞は道路族の味方です!ということになるのだがどうだろう。ちなみに産経新聞の二面ヒトコマ漫画には「包み方は例のギョーザと同じで」と題して中国人?と思しき人間がチベットの騒動を包んで?いるのが描いてあった。これもネトウヨ読解法によれば「産経新聞が隠蔽しろと主張した!」ってことになるんだろうな。それはさておき、ともかく川柳に代表される、ある事象団体出来事に対し、直接話法ではなく皮肉などを用いて間接的かつ諧謔的に表し(時にそれらは芸術にまで昇華される)暗に批判することを「粋」としてきた「文化」がわからないということならば、日本の古典はまるっきり駄目ということになるのだが、朝日のことでワーワー騒いでいる普段日本の文化古典を大事にとかなんとかほざいている人たちがどういう風に「源氏物語」だの「仮名手本忠臣蔵」「南総里見八犬伝」を理解しているのか(当然日本文化好きならば読んでて当たり前でしょう?)不安になってきた。まさかトンデモ解釈を外国人に得々と話していたらどうしよう。まあ多分読んでないだろうからそんなのは杞憂だろうけれど。

さてそんな雑然とした気持ちの中でどんな映画を見ようかと考えあぐねている。公害つながりでは「ゴジラ対へドラ」を見たばかりだし、「軍艦島ドキュメント」はまるっきりホラー映画だから遠慮しておく。あかるいばかりのハリウッドも、愛すべきカルト映画も、爆発力のある戦争映画も今は気分ではない。そんなこんなで時間ばかり過ぎていく。嗚呼。

*1:ちなみにこの句の投稿者名から産経抄ファンクラブスレでは「石井おじいちゃんの親戚」説がでていたがさすがにそれはどうかと思った。爆笑したが