産経新聞のストレート・トゥ・ヘルな馬鹿ぶりには胸が熱くなる

毎朝爽やかな娯楽を提供してくれる産経新聞だが、以前の約束どおり例の沖縄県民大会をきっちり記事にしてくれた。こうなると43000人が取材した結果ではなく世界日報丸写し状態だったのが確定事項とされてしまうわけだが、そんなの関係ねえ!のが産経クオリティ。調査もせず11万人はうそだ!と書きたて、挙句に「自分とこで書いた記事も忘れたのか」と笑われればムキになっておっとり刀で調査する。この大真面目に頭かくして尻隠さずのフルスイングぶりを見るにつけ、こんなんじゃ産経への上納金のために経営が圧迫され青息吐息の夕刊フジは本当に救われないとおらあ情けなくて涙出てくるYO!

とまれ泣いてばかりいてもしょうがないので、以下該当記事を引用していく。

沖縄教科書抗議集会、参加者は「4万人強」 主催者発表11万人にモノ言えず
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/071006/stt0710062247005-n3.htm

記事を一読すれば、この県民大会への官民一体となったバックアップ(会場までの運賃を無料にしたバスをだしたり教育委員長が動員を呼びかけたり新聞紙上で切り取り使用の無料パスを掲載したり)ぶりがよくわかる内容となっている。これならば11万人(主催者発表)という参加者総数も頷けるというものだ。だが産経はそんなことは華麗にスルーして記事を仕立て上げている。

 先月29日に沖縄県宜野湾市で開かれた「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の参加者数が主催者発表の11万人を大きく下回っていたことが明らかになった。県警幹部は産経新聞の取材に「実際は4万人強だった」(幹部)と語ったほか、別の関係者も4万2000〜4万3000人と証言している。集会は、県議会各派や市長会などが実行委員会となり、沖縄戦で日本軍が直接、住民に集団自決を強制したとする記述が削除・修正された高校教科書検定の撤回を求めたもの。渡海紀三朗文部科学相は参加者数を主な理由に対応策を検討、国会でも誇張された11万人という数字をもとに論争が進んでいる。

産経はいいかげんこの謎の「県警幹部」やらをだすのはやめたほうがいいのではないか?以前にも書いたが有力全国紙(読売毎日朝日)には語らずに、世界日報や産経にだけ明らかにする県警幹部・関係者。主催者発表と並べてみて信憑性があるのはどちらだろうか。それにつけても、なぜそんなに自信があるならきちんと県警発表として報道しないのだろうか、という疑問がわいてくる。この疑問については後のほうの記事で触れられているので別途考えることにする。

 ■1平方メートルに4人?

 集会が開かれた海浜公園の多目的広場は約2万5000平方メートル。仮に会場に入りきれなかった人を1万人と見積もれば、1平方メートル当たり4人いた計算になるが、多くの参加者は座っていた。

 会場は、東京ドームのグラウンド部分(1万3000平方メートル)の約2つ分にあたるが、同ドームのスタンドを含めた建築面積は約4万6800平方メートルあり、グラウンド部分を含めても最大5万5000人しか収容できない。

勝手に会場の「規模」を決めておいて、そこに行かなければ「参加者ではない」とする産経の強引さにはすでに慣れっこになっているのでもう言葉も出ないが、それにしてももし現場検証するのなら少なくともさまざまな角度から何時間かの画像を提示しなければ正確に把握することはできないように思える。産経が「スカスカの現場画像」を以前提示したもののみしかだせないのはなぜだろう。沖縄タイムス琉球新報のを見ると11万人の数字が納得できるようなものとなっている。これらの新聞社の提示することが正しいといっているのではない。一方に都合のよい現場写真ばかり提示するのであれば、その意味合いにおいては同じアナの狢であるということだ。11万人捏造派も少なくともこういう画像を提示して悦に入るのであれば、こういう画像こういう画像についても考慮しなければならないのではないか?まあ11万人否定派(南京大虐殺みたいだな)のブログを読むとこういった画像GLAYのライブと比較していたりするのだが、法華狼さんも指摘していたように、そもそもチケット発券をしたり最初から最後まで移動人数が少ないといった、開催についての前提条件が異なるモノと比較することにあまり意味があるとは思えない。例えばウッドストックのように、フリーコンサートで参加者が頻繁に入れ替わることを想定しているものとならまだ話はわかるが。

 大会事務局幹事の平良長政県議(社民党)は、算出方法について、「一人一人をカウンターで計算しているわけではない。同じ場所で開かれた12年前の米兵による少女暴行事件の集会参加者数8万5000人(主催者発表)を基本にした。当時に比べ、会場周辺への人の広がりは相当なものだった」と語り、主に日米地位協定の見直しを求めた平成7年の県民大会の写真と比べながら、算出したと明かした。また、参加者を大量動員した連合沖縄は「自治労沖縄県本部や連合沖縄から応援を出し、10人ぐらいで会場周囲を歩いて、入り具合をチェックした」(幹部)としている。

また「自治労沖縄県本部や連合沖縄から応援を出し、10人ぐらいで会場周囲を歩いて、入り具合をチェックした」と語る謎の「幹部」が登場ですか。産経は自治労が好きだねえ。県民大会の主催者が沖縄県議会議長(自民党員)であるのは有名は話なので、自治労自民党幹部が党派や理念を超えて動員をかけたという事態がすでに沖縄の怒りがどれほどのものかを物語っていると思うのだが、この記事だけ読むとまるで動員をかけたのが主に「連合沖縄」であるかのように読み取れ、ある種の印象操作を狙っているとしか思えない。

そして例の「警察発表」についてである。

■警察は発表せず

 沖縄県警は、参加者の概数を把握しているが、「警察活動の必要な範囲で実態把握を行っているが、発表する必要はない」(警備部)として、公式発表を控えている。

 これには背景がある。12年前の県民大会参加者数を主催者発表より2万7000人少ない5万8000人と公表、「主催者から激しくクレームをつけられた」(関係筋)経緯があるからだ。

このあたりを読んでいると日刊ゲンダイがよくやる「関係者」「関係筋」で構成されたアヤシゲな記事と似た感じを覚える。本当にいるのかこの関係者らは。そもそも沖縄に限らず、こういう大会で主催者発表と県警発表が並列して発表されたケースはあまりないような気がする。なぜならば主催者発表と断り書きを入れる時点で「ある種のバイアスはありますよ」というエクスキューズにしているからだろう。産経が「とにかく今回だけは異常なんだ」と力説したいのはよくわかったが、まあここまで大見得を切ったんだから今後は(近い例としてはクライマックスシリーズの入場者数とか)派遣日雇いアルバイトでも使って産経紙上にて発表する「○○大会」の入場者数はすべて独自調査で頑張ってください。ちなみに産経新聞の発行部数も公称なんてぬるいことせず、当然販売実数をだしてくださるんでしょうな。閑話休題

それにしても、なぜこの「関係者」「関係筋」は身元を明らかにして語らないのだろうか。そうでない記事はいくら力説されてもなかなか信用しにくいと思われるのだが。(直近にガクラン事件のような“前科”がある場合はよけいに)

 警察が発表を控えた結果、主催者発表の11万人という数字があたかも事実のように独り歩きし始めた。

 11万人は、県民(約137万人)の12人に1人が参加したという大きな意味を持つ。

 地元紙は号外で県民大会を報じたほか、9月30日付の琉球新報沖縄タイムスは、「11万6000人結集 検定撤回要求」「11万人結集 抗議」と参加者数を強調した大見出しをつけた。このうち沖縄タイムスは「主催者発表が11万人なので、11万人という形で掲載した」と説明している。沖縄以外の新聞やテレビも主催者発表をもとに報道。朝日新聞(東京)は、1面トップで「沖縄11万人抗議」の見出しを載せ、10月2日付朝刊では、主催者発表の注釈を抜いて報道した。産経新聞も10月2日までは主催者発表と明記して11万人と報じたが、3日付の「産経抄」などで主催者発表に疑問を呈した。

主催者発表の注釈を抜いて報道したのはなにも朝日だけではない。(読売新聞の社説参照)また読売は見出しにする際にはすべて「教科書検定 島ぐるみ意義…沖縄県民大会、11万6000人集う」「沖縄県民11万人の怒り、国を動かす…検定見直し検討」主催者発表という注釈をつけていない。読売なんて産経を仲間にしてくれなかったんだから、朝日以上に叩けばいいのに。

 職員が勤務の傍ら防災無線を使って大会をアピールしたり、自治体のホームページで告知したりするなど、事実上、公的なイベントとなった。加えて、県議会議長が大会の実行委員長を務めるなど議会も大会を全面的にバックアップした。

 県議会でも当初、自民党県議団は消極的だったが、決議文の表現を弱めることを条件に賛同に回り、超党派での大会参加が実現した。反対を続けると「沖縄の痛み」への無関心ととらえられかねず、来年の県議選や近づく衆院選への影響を心配する声が党内から出たことも一因といえそうだ。

ことここにいたっても、なぜか県議会議長が自民党員であることを明記しない。消極的だったのにもかかわらず、主催者になったり、あるいは自身の戦争体験を語りながら軍関与を訴える*1というのはなかなかに分裂した行動ともいえるが、もし本当に自民党県議団と県議会議長がこのような立場、行動をとっていたとなると、それは沖縄自民党が一枚岩ではないことを物語っているのだが、どうも紙面にはそういう「分析」がでてこない。もちろんそういう「分析」をすると、沖縄における集団自決問題が県民感情にどれほど根深く残っているか(それこそ県議会議長である自民党の大物が、その立場よりも個人の「感情」が優先せずにはいられないほどの)を示してしまう結果となるので、「ごく一部が騒いでいるに過ぎない」としたい産経の論調では触れられないのはわかりきった話だが。
それにしても3ページ目を読むと、どれだけ官からのバックアップがあったか、それがすさまじかったかがよくわかる。教育長まで引きずり出しているわけで、そういう普段ならあまり動くことなど考えにくい官がここまで動いた「事実」をもっと産経は「真面目」に考えるべきではないか?数字に拘泥しそこへ埋没する前に、といいたいところだが、出張費を使っても(夕刊フジの「血と汗と涙の結晶である」上納金が含まれていることを忘れるな!)2ちゃん並みのこんな下らん記事しか書けないあたりに産経の取材能力とそのレベルが如実にあらわれているので、そんなことを要求するほうが無理なのかもしれない。

小渡亨県議(自民)は、「(11万人という主催者発表は)非常に問題だ。こういった問題で『これは違うだろう』というと、沖縄では“非県民”になりかねない雰囲気だ。戦前の大政翼賛会と同じだ」と危機感を募らせている。

記事は最後に東部海浜開発の埋め立て事業に関して反対意見を述べた県議会議員に対し「よそ者が十分に調査もしないでヒステリックに騒ぐことほど迷惑な話はありません」と発言して議会が空転したことがある議員の談話を引用して終わる。今回は「よそ者」が「ヒステリックに騒ぐ」と切り捨てるわけにはいかないから、戦前の大政翼賛会と一緒、などと述べているようだが、ちょっと待ってほしい(産経風に)。こういう行動が起こせないのが戦前の大政翼賛体制なんじゃないのか。こういう人のこの手の言動を見ると「沖縄」を利用しているのは果たしてどっちなのかわからなくなる。

大会前、主催者の県議会議長談話では「5万人が目標」だった。だから産経(と世界日報)が「4万強しか参加してない」と断定したがるのもわかる。主催者目標にすら届かなかったと主張(=県民から支持されてない)したいのだろう。是が非でも引き摺り下ろしたいのはわかるが、こうまで必死だと(タブー中のタブーである「主催者発表」に疑問符をつけるという禁じ手をおかしてまで)かえって逆効果以上の何者でもない。逆説的な話だが「数は問題ではない」という主張が、朝日をはじめとする左派メディアではなく、産経や世界日報つくる会」といった右派メディアからでている気がするのは私だけだろうか。

ともかく産経もこんな他紙が追わない瑣末なことを必死で追いかけていると(そしてそれを見て喜ぶのはネット右翼だけ)、そのうち購読者が好事家かネットウヨクしかいなくなるとは思わないのか。まああびるんみたいなネット右翼系記者もいるからなあ。まさに、ネットウヨクが書き、好事家が買い、2ちゃんねるネタを提供する、夕刊フジやらの援助で成り立つ新聞。それが産経。クオリティはまだまだ下がらんぜ!

*1:沖縄タイムスの記事がリンク切れとなっているので愛・蔵太さんのところをはっておくhttp://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20070622/doku