沖縄集団自決問題について議論して思う二、三の事柄
某所にて「軍命令によるもの」と教科書表記するなと主張する方と議論していたが（読みたい方は拙mixi日記「日本軍は関与しても」へどうぞ。ただしSNSのためアカウントがないと読めません）、どうやら平行線で終わりそうである。平行線で終わるならまだしも、結果として実のある議論として成立しなかったのがとても残念だ。
私がかの人と議論していてまず驚いたのが「沖縄県民も片棒を担いだ」と主張したことである。私はこの言葉を安易に本土の人間が発するのは、沖縄の歴史を考えれば問題があるのではないか？と指摘したのだが、そうすると「沖縄問題と同和問題も同列だ」と突然話し出したので二重に驚いていしまった。
かの人いわく「沖縄も同和もマイノリティであることの「特権」に依存しているから」というのがその理由らしいが、そのことと「沖縄集団自決問題」とどう絡んでくるのか、私の乏しい知能では理解できなかった。でもう少し話を聞いてみると、かの人に近い方が同和関係で自殺されたらしく、私が以前から松本治一郎を尊敬している（解同や全人連、自由同和会を尊敬しているということではない。各団体には批判するべき点が多々ある。だが、だからといって彼らの差別されてきた歴史から目を背けてもよい、という話でもないのだ。事態は二元論で語れるほど単純ではない）といっていたのが納得できないから、ということみたいだが、自殺されたのはお気の毒とは思うけれども、その意趣返しをここでされても、まさに 江戸の敵を長崎が討つ意味はないのに。とまれ、おそらく私からの「沖縄を知らないくせに一方的な判断下すな」という批判を避けるために沖縄問題と同和問題を同列に語ったのかもしれないが、やぶへび感というか、こういう相対化して相殺しようというのは、私から見ると、単なる論理のすり替えにしか見えない。自分は身近に死んだのもいて同和や差別を知ってるが、「私」は実態を知らずに同和に一方的に判断下している、それと同様に、沖縄を知らない本土人の側だって沖縄問題に対して判断を下すことはできる、とかの人は思ってるんだろうな。
（不思議なのは、なぜ私が「同和の実態」を知らないと断定できるのか、ということ。例の「同和利権の真相」程度なら読んでいるし、知り合いに共産党員もいるので、ある程度の知識は持っているつもりなんだが。で、そういう批判文も書いていたりはするのだが、どうもそういうところはスルーして、都合のよいところだけに飛びつく傾向がある。これは独学で学んだ人特有の「病」なのだろうか。）
ある意味傲慢というべき姿勢なのだが、産経をはじめとする右派はよくそういうものの言い方をするものである。例えば、韓国併合についても植民地化にはこういういい側面があったのに、韓国人は語ろうともしない、とか。このテの相対化に意味があるとは思えない。そこで展開される論理は単なる自己正当化だけであり、実のある議論へは結びつきがたい。
かの人の主張を簡略にまとめると「軍命令があった」とするには「軍の指揮系統が必要」であり「命令書が必要」であるらしい。そういったものの前には「実際の被害者が語る体験談」など「気の毒」ではあるが「証言であるだけに信憑性に乏しい」ので「命令書」がないから「軍命令」とはいえない、当時の状況を考えて拡大解釈ですませろ、でないと軍のみの責任を問うこととなり、他の日本人に対する戦争責任を問わなくなりそれは片手落ちである、とその後続くのだが*1私としてはそもそも、どうしてかの人の主張する「俺ちゃんルール」をこちらが是としなくちゃいけないのかがよくわからない。元々「そのコンセンサスってどうよ？」みたいなハナシをしている中に「俺はこう思うんだからこれが事実だ唯々諾々と従え」みたいなことをいわれてもなあ。そもそも他の日本人も責任があるのだから軍だけの責任ではない、なんて「相対化」もいいとこだが、そう指摘すると「そう思えるのは重症だ」なんて誹謗中傷レベルの話がでてくるし。こうなってくると知識が知識として必要なのではなくて、アイデンティティ保持のために必要であるという、骨がらみの意地を感じる。どなたかがこんなことを言っていた。詭弁を弄するくらいなら「国体護持のために死んだ兵隊さんを悪く言うな！」といってくれたほうがすっきりする。なるほど、相対化して事態に対する「重み」を相殺しようなんて真似をするくらいなら、確かにそういってくれたほうがよほど素直で好ましい。だが、そんな素直な人、悲しいかな、ほとんどいないのがネトウヨなのである。
