「あすの会」が「救う会」に近づきつつあるように思える件について

※タイトルを若干変更しました。

例の「素粒子死に神コラム」問題が飛び火している様子。

産経新聞
朝日「死に神」報道、あすの会が抗議
2008.6.25 19:02

 朝日新聞が18日付夕刊1面コラム「素粒子」で、昨年8月の就任以来計13人の死刑執行を指揮した鳩山邦夫法相を「死に神」と表記した問題で、「全国犯罪被害者の会」(あすの会)は25日、「犯罪被害者や遺族をも侮辱する内容」だとして、朝日新聞社に「抗議および質問」と題する文書を送付した。

 文書は「確定死刑囚の1日も早い死刑執行を待ち望んできた犯罪被害者遺族は、法相と同様に死に神ということになり、死刑を望むことすら悪いことだというメッセージを国民に与えかねない」などとしている。また、死刑執行の数がどうして問題になるのか−など4項目の質問に、1週間以内に回答するよう求めた。

 朝日新聞社広報部は「いただいた『抗議および質問』を真摯(しんし)に受け止め、速やかにお答えする」とコメントを出した。
http://sankei.jp.msn.com/topics/affairs/5261/afr5261-t.htm

毎日新聞
朝日新聞死に神」報道:全国犯罪被害者の会朝日新聞社に抗議文

 死刑執行の件数を巡り、朝日新聞18日付夕刊1面のコラム「素粒子」が鳩山邦夫法相を「死に神」と表現した問題で、全国犯罪被害者の会あすの会)は25日、朝日新聞社に趣旨の説明を求める抗議文を送付した。

 文書は「犯罪被害者遺族が死刑を望むことすら悪いというメッセージを国民に与えかねない」と抗議した上で、「法相の死刑執行数がなぜ問題になるのか」などと回答を求めている。

 同社広報部は「真摯(しんし)に受け止め、速やかにお答えする」とコメントした。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080626ddm041040091000c.html

時事通信
2008/06/25-19:47 「死に神」に被害者団体抗議=「侮辱的、感情逆なで」
 13人の死刑を執行した鳩山邦夫法相を「死に神」と表現した朝日新聞の記事について、「全国犯罪被害者の会あすの会)」は25日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、「死刑執行を望む犯罪被害者遺族も死に神ということになる。侮辱的で感情を逆なでされた」とする抗議文を、同日付で朝日新聞に送ったことを明らかにした。
 抗議文で同会は「法律に従って執行を命じたにすぎない法相を非難することは、法治国家を否定することになる」と批判。記事の意図などについて同社に回答を求めた。
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a4%a2%a4%b9%a4%ce%b2%f1&k=200806/2008062500761

三社の報道は微妙に違うが、これで大体の状況はつかめる。語弊があるのを承知で言えば、正直、今回の抗議は自意識過剰が過ぎるような気がする。出来の悪い、たかが風刺コラム*1に鳩山大臣が「ネタにマジレス」しているようなところもあり、そんなのにのっかって「いわれてもいないのに“俺のことを言ってるのか”と抗議する」という同和団体をも想起させるほどの強硬な姿勢をとる理由がよくわからない。鳩山大臣への援護射撃のつもりなのだろうか。「死刑を願う」のと「死刑を執行する」側とではまったくもって立場も違えば第一意味も違う。こうなると単なる圧力団体になってしまうのだがそれが果たして「とるべき道」なのかといわれると疑問符をつけざるを得ない。

それにしても時事通信のが気になった。

抗議文で同会は「法律に従って執行を命じたにすぎない法相を非難することは、法治国家を否定することになる」と批判。記事の意図などについて同社に回答を求めた。

弁護団は法律に従って粛々と弁護を行ったにすぎず、弁護士を非難することは法治国家を否定することだ」ということですか。「死に神」コラムの件でうちゃさんからTBをいただいたが、私もそれに同意で、死刑廃止論について(自分が廃止論者か存置論者か別にして)扱うと、「被害者の権利を守れ」などというコメントを書いてくる人がいるが、「被害者やその遺族の権利を守る=加害者を死刑にすることによってのみ達成する」という思い込みがどうして生じるんだか。国は厳罰化よりも被害者やその遺族への精神的金銭的ケアの充実を優先するべきではないのか。(原理原則的な死刑廃止論者以外の、多くの廃止論者はここに立脚していると思う。なにしろ当のアムネスティはこのことを強く主張しているし。)このあたりは「拉致被害者の救出=北朝鮮への制裁路線堅持」を主張する家族会(+救う会)と似ているような気がする。*2肉を斬らせて骨を斬るというよりも、木を見て森を見ない状態に近いというか。*3

でもってこの件でブログやらmixi日記を読んでいるといまだに「死刑廃止論を後押しする朝日は左翼新聞」*4などと称しているヒトビトがいるが、そんなこというとサヨクに怒られるんじゃねえの?朝日はポジショントークよりタチの悪い、つまり風見鶏新聞です。

◆アレな人がいるかもしれんから一応注釈を

どうも粘着な読解力不足な人がいるみたいなので「被害者は文句や抗議をするなといいたいのか!」と吹き上がる前に一応。正当な根拠のある抗議ならばそれはむしろ行うべきだし、偏見や無理解とは個人ではなく団体で対処したほうが成果があるということもわかっている。それらを踏まえた上で、やはり今回は過剰反応であると私はあえていいたい。執行する側と自らの立ち位置を意図的に(かどうかはわからないけど)混同し、あやをつけるのは、彼らの「意義」そのものが問われかねないと思う。厳罰を求めるのは被害者・遺族感情としては当然だろう。だからこそ国にガス抜き機能として弄ばれないようにしてもらいたいのだ。どこかの会のように。

*1:今まであまりにもくだらなすぎてほとんど読んでこなかった。熱心な朝日読者産経新聞アンチ朝日な人たち以外はそんな感じなんじゃないでしょうか

*2:黙然日記さんとこでもhttp://d.hatena.ne.jp/pr3/20080625/1214402837コメント欄で指摘されていたが。

*3:「家族会」はともかくいまや「救う会」は「巣食う会」とまでいわれてたりするからなあ。

*4:そもそも朝日新聞って死刑廃止論を謳っていたっけ?死刑廃止のキャンペーンをはったりした記憶がないのだが…。また紙面で大々的に死刑廃止論をぶったりしたことがあったっけ?個人的には朝日新聞死刑廃止論というよりも、消極的な存置論者だと思っている。曖昧な記憶に基づく話で申し訳ないのだが、誤謬があればご容赦を。