産経、どのクチがそれをいう?

毎度毎度なにか主張するたびにどのクチがそれをいうのブーメランでおなじみのわれらのアイドル産経新聞ですが、検察の陰謀という説をどうにかして消し去りたいのか、こんな↓わけのわからんコラムを書かせてますた。

【宮家邦彦のWorld Watch】陰謀説のウソは看過できない

 大方の予想通り、小沢一郎民主党代表の公設第1秘書が起訴された。真相はいずれ裁判で明らかになるのだから、細かい事実関係を今詮索(せんさく)しても仕方がない。だが、この事件との関連で時々聞こえてくる「今回の捜査は米国CIAの陰謀だった」とか、「ユダヤにやられた」等といった流言飛語だけは、どうしても看過できない。

 グーグルで「CIA、陰謀、西松、小沢一郎」を検索すると、何と8000件以上ものヒットがある。そのほとんどは私設ブログ上の他愛のない知的戯言(ざれごと)であり、いちいち目くじらを立てる話ではないかもしれない。

 しかし、国際情勢を理解する上で正しい情報が不可欠である以上、こうしたデマのどこが間違っているかを正確に伝える必要があると思うのだ。

 それではCIAという情報機関は一体どんな組織なのか。

 本部はワシントンDCの川向こうラングレー地区。巨大な建物はスパイ組織というより大学のキャンパスに近い。職員はアナリストとオペレーターに大きく分かれる。超高学歴集団である前者の多くは米国内で調査分析に、後者は主として海外で情報収集に従事する。もちろん日本にもオペレーターはいるが通常日本語はあまり上手ではない。


 私の友人で少なくとも3人の米国外交官が、昔永田町では「CIAだ」とうわさされていた。日本語が流暢(りゅうちょう)で日本の内政にも非常に詳しいからなのだろうが、もちろん彼らはCIA関係者ではない。

 常識で考えてみてほしい。終戦直後の混乱期ならともかく、21世紀の日本で日本語も満足にしゃべれないCIAオペレーターたちが天下の東京地検特捜部を意のままに動かせるだろうか。

 それでもブログによれば「東京地検特捜部の歴代トップは、全員CIAに留学し、CIAの対日工作員としての徹底的教育を受け、日本に帰国する」のだそうだ。もちろんこれも大うそなのだが、最近のうそは「振り込め詐欺」のように実に巧妙にできている。

 陰謀といえば、日本では「ユダヤ人、ユダヤロビー」の陰謀説を信ずる人々も後を絶たない。ユダヤ人が世界征服を計画している証拠とされた「シオン賢者の議定書」は19世紀末にロシアで出版されたが、1921年以降、この書物が偽物であることは欧米知識人の間で既に常識となっている。

 それにもかかわらず、昔はナチスドイツから、自動車王のヘンリー・フォード、最近ではミアシャイマー、ウォルトといった著名国際政治学者にいたるまで、この種の陰謀説を直接間接に喧伝(けんでん)する向きが絶えないことは実に驚くべきことだ。

 日本人がユダヤ人陰謀説を唱える最大の理由は「無知」であるが、これが米国では単なる「無知」では済まされない。よほど事実に基づく慎重な議論でも行わない限り、「差別主義者だ」と誤解され、知識人としての人格を失うからである。

 もうお分かりであろう。CIAやユダヤに限らず、フリーメイソン、中国の「客家」などの陰謀説はほとんどがうそである。日本におけるCIA陰謀説の多くは国内のある政治勢力が他の政治勢力に影響を与える一手段であったし、これからもそうであろう。世界におけるユダヤ陰謀説も、不都合な国際政治現象を自分たちに都合良く解釈するための効果的な手段として繰り返される。もし今でもこんなことを言う人が周囲にいれば、よくよく注意していただきたい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090326/stt0903260821002-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090326/stt0903260821002-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090326/stt0903260821002-n3.htm

まあ読んだ瞬間、元航空幕僚長(いまや講演稼ぎでウハウハ)の名前が浮かんだ人や、そいつの「師匠」で旧商工ファンドの提灯持ちをしていた自称文化人こと「正論」メンバーズな大学の名誉教授を連想した方、もしくはそいつらの繰言を毎度毎度飽きずに掲載している某「オトナの常識」やらにいえよと思った方は浜の真砂ぐらいいらっしゃると思うんですがとりあえず話を先に進めます。

(しかしこの短い文章を三分割してPV稼ごうとするのには本当に腹が立ちますな)

なんというかこの方あまりネットをご覧になったことがないんでしょうかね?「何と8000件以上」なんて驚いてますが、「田中 CIA 陰謀」でgoogleセンセイにお伺いをたてると(今回の小沢代表のケースが含まれているにしろ)約 50,400 件がヒットしました。また「田中 CIA 陰謀 ロッキード」で検索すると約 9,500 件(トップに来るのがApemanさんのブログっていうのがさすがですね)で、上記事件がネットのない時代のもの、ある種2009年現在からみれば「過去の遺物」的な事件であることを考えると結構ヒットするんだなという印象がむしろありますな。逆にそれから考えると「今ここ」の事件にもかかわらず8000件ってのは逆に少ないようにも思えます。*1まあこの辺はあくまでも印象論になるのであまり水をかけてもしゃーねえなってことですが。

まあしかしなんですか。なんといっても今回の記事の一番のオチは「小沢一郎 検察 陰謀」で検索すると約 79,400 件(「小沢 検察 陰謀」で検索すると約 634,000 件!)となることでした。ギャフン!8000件で驚いてないでこの「陰謀論」について物申したほうがいいんでないの?つーか今回の事件に関して抱かれているのは「ユダヤの陰謀」なんて極論ではなく「検察への疑義」でしょうに。宮家先生は少し2ちゃんでも見てお勉強されてみてはいかがでしょうか。

で、8000件にビックリするというような近代的ネットサーフィンにあまりお得意ではないご様子を披露したあとは、CIAとはなんぞや?とそれこそgoogleセンセイにお聞きしたら一連のプロセスが0.05秒間で完了しそうですわ。いや完了どころかこの元外務省のセンセイよりもずっと詳しいサイトが(海外のもを含めて)ウントコショと現れて目移りして思わずクリックしたサイトが陰謀論を展開していたりなんてのはザラですわい。それはさておき、無駄に字数稼ぎでそんなと学会以下のネタをカイチンされるよりも、宮家先生には是非産経が持ち上げているある人物(産経新聞客員編集委員が審査を担当した某懸賞論文で華麗なるデブーを遂げました)が「コミンテルンの陰謀」なんてのを自衛隊員にむけて講演していたりする事態についてどう思うのかお聞きしたいものです。俺はそっちのほうが問題だと思うんだけどねえ。デマの実害がよほどありそうだ。

日本人がユダヤ人陰謀説を唱える最大の理由は「無知」であるが、これが米国では単なる「無知」では済まされない。よほど事実に基づく慎重な議論でも行わない限り、「差別主義者だ」と誤解され、知識人としての人格を失うからである。

ここの箇所なんか「ユダヤ人」を「コミンテルン」に置き換えるとまんま当てはまりますな。「日教組」でもいいかも。

というわけで産経におかれましては

陰謀説はほとんどがうそである。日本におけるCIA陰謀説の多くは国内のある政治勢力が他の政治勢力に影響を与える一手段であったし、これからもそうであろう。世界におけるユダヤ陰謀説も、不都合な国際政治現象を自分たちに都合良く解釈するための効果的な手段として繰り返される。もし今でもこんなことを言う人が周囲にいれば、よくよく注意していただきたい。

ここの文章の「CIA」を「コミンテルン」「日教組」へ、「ユダヤ」を「コ(ryに置き換えてよくかみ締めていただきたい。

◆ちなみにこの宮家って人、こんなことも書いてます。


【宮家邦彦のWorld Watch】イラクをめぐる7つの神話
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090312/mds0903120819001-n1.htm

(3)イラク大量破壊兵器はなかった

 「なかった」というより「作れなかった」のが真相だ。後にフセイン核兵器開発の意図があったことは認めている。イランの核兵器開発も潜在的脅威だった。戦争がなければ、今ごろはイラクの核開発疑惑が再問題化しているに違いない。

(4)イラクで内戦が始まる

 昔一部の識者が真顔で唱えていた説だ。確かに、イラクの宗派間抗争は深刻だが、1月末には地方選挙が整然と実施されている。イラクが泥沼化するといった「予測」は徐々に外れつつあるのではないか。

なんつーかこんなのが首相公邸連絡調整官をやっていたとは安倍ちゃんはいろんな意味でお気の毒な方ですな。

*1:ちなみに「藤原紀香 離婚」で検索すると約 596,000 件もヒットしますな。この件についても陰謀論的な話があることはご存知な方はご存知でしょう。海の向こうより「今ここ」の「陰謀論」の法に目が向きやすいのは人の心理としてはトーゼンであります。