「使いまわし」と「リサイクル」は似ているようでチョト違う

今日は新聞休刊日につき、産経ヲチネタはいったん小休止。前々から書こう書こうと思っていた10月18日号「週刊新潮」“米軍基地を「人質」に取られた沖縄戦「集団自決」論争”について触れたい。(以下該当記事より引用。強調等は筆者判断)

記事としては、教科書書き換え問題で政府が書き換え部分の修正やむなしとしたのは普天間基地移転問題を「人質」にとられているため致し方なかった、という論調である。「関係者」が続出するいつもの新潮らしい記事なのだが、後半部分で少し様相が変わってくる。ジャーナリスト・識者の話が掲載されているのだが、これがまた、出る人出る人「正論」や「諸君」、「産経新聞」紙上でよくお目にかかる方ばかりである。トップバッターは山村明義氏。

「この対応はある意味で悪しき前例を作ってしまったのではないかと思いますね。例えば、中国や韓国からも、同じように日本の教科書の記述についてあれこれ言われてきた過去がありますが、今回のケースを見て、やっぱり日本は、強く文句を言えば教科書の書き換えに応じるのだというように取られかねません」

悪しき前例って、そもそもつくったのはどっちだ?それに「中国や韓国」の例を持ち出す意味がわからない。今回は国内問題であり、諸外国が「文句」をいうのとはまったく別ケースではないか。山村氏の沖縄への意識がどのようなものであるかよくわかるコメントではあるが。

更に続けて、今度は恵隆之介氏の登場である。

「まず、参加者が11万人もいたというのは、間違いなく嘘だと言えます」
と語るのは、沖縄在住ジャーナリストの恵隆之介氏である。
「会場となった宜野湾海浜公園には、人がぎっしり入ったとしても5万人が限度。ですから、当初は主催者も“5万人が目標”と言っていたのです。11万とは、肩車の上に肩車をしてようやく収まるような数字。県警によれば、密集したとしても1平方メートルに収まるのは4名くらい。航空写真から見てみると、会場には結構隙間がありました。日傘を差している人や、敷物の上に座っている人がいたためです。我々の計測だと、参加者は3万5000人です」
沖縄県警が内々に見積もった数字では約4万人。動員をかけられて、集会に参加した人達も大勢いる。
「本土からの参加者も多数見られました。そして、はじめは慎重な姿勢を見せていた仲井真知事も、県職員に参加を呼びかけ、教育長は教職員組合やPTAに激を飛ばし、組合員の教師は生徒に参加を呼びかけた。そして、動員された参加者を片道無料で運んでいたのがバス会社です。沖縄のバス労組は“座して滅びるより出て闘え!”をスローガンとしているくらい、過激なことで有名です」(同)
集会には、何故か韓国からの参加者も少なからずいて従軍慰安婦問題のビラを配っていたという。

恵隆之介氏は防大卒・元自衛官の沖縄在住保守系ジャーナリストである。私はこの肩書き自体どうということも思わないが問題は氏が「米軍基地就職専門学校」を経営していること、それと符合するかのように、米軍基地が絡んだ問題については基地擁護の立場を取る点にある。チャンネル桜に出演時もそういう論調で電波気味のコメントをしていたし。(恵忠久氏とはなにか関係があるんだろうか?)そういう観点からすると上記発言をみると、「沖縄の総意ではない」としたい願望が見え隠れする。「我々の計測では」としているが「我々」ってダレだ?また教育長が檄を飛ばすというのは、本来彼らがかなり国よりの姿勢をとることから考えるとかなり異例の事態のように思うのだが、彼の発言をみるとなんだか教育長も左派勢力に飲み込まれているかのような印象を受ける。それにしても「韓国からの参加者」というのは本当なのだろうか。単に8/15の靖国神社周辺のように、集まった人の中でそういうビラを配っている人もいたということではないだろうか。(ちなみに8/15の靖国神社参拝者主催者発表の中には、周辺にて「河野洋平国賊」「南京の真実映像化へご協力を」等々訴えビラを配布している人物も当然含まれていることだろう)

恵氏の論調を受け「主催者発表の数字を鵜呑みにして狼狽する政府」を鼻で笑いつつ、次なる識者は屋山太郎氏である。(この辺の流れがなんというかいろんな意味で自然であるのがなんともかんとも)

政治評論家の屋山太郎氏は喝破する。
そもそも、数の問題じゃないんですよ。今は“11万人集まったから、これは民意を反映している。だから検定を見直して教科書を書き換えましょう”という流れになっている。でも本来は、何人集まったって検定方針は検定方針のはずです。11万人だから変えて、5万人だったら変えられない、ということにはならない。数字を水増しして感情に訴え、肝心の事実を捻じ曲げるなんて実にくだらない。後世に残すべき史実がそんなことで変わってしまっていいのか。そんなやり方を許してしまっては、近代国家として失格ですよ」

以前のエントリー“逆説的な話だが「数は問題ではない」という主張が、朝日をはじめとする左派メディアではなく、産経や世界日報「つくる会」といった右派メディアからでている気がするのは私だけだろうか。”と書いたけれども、直裁に力説(しかも屋山氏が)しようとは。来場者数を問題視してしつこくネタにし続けたのはどこのメディアかお忘れになられたようですな。いや覚えているからこそ、旗色が悪くなったのでこんなことを言い出したのか。普段批判している左派メディアのやり方そっくりで、産経シンパはブーメランがお好きなご様子。それはさておき、とにかく史実というのは自分らに都合のよい事実のことであるというのはよくわかった。だからといってそれをごり押しすれば力の反発が戻ってきても仕方ないと私などは思ってしまう。

で、この屋山センセイのコメントを引き継ぎながら「沖縄県民の被害者感情が問題だ」「そもそも60年以上前のことじゃないか」(だったらもう戦争ネタを書いて「あの戦争を風化させるな」なんてえらそうにいうんじゃないよ)などと主張する花岡信昭氏とくるともう正論のメンバーが大挙して週刊新潮に引越しをしたか、もしくは出張費のかからない出張をしているかのように思える。タン的に言えば「使いまわし」ということなのだが。いかにこういう主張をする識者の層が厚いかをよく物語ってくれるエピソードですな。お決まりの御用識者・子飼いジャーナリストに、お約束のような擁護記事・コメントを書かせる。「世間の風」に触れてないのは極右極左どっちもどっちという気がする。