あすの会は一体なにがしたいのか?

あすの会の迷走ぶりを見ていると、こちら側としてはいたたまれない思いすらする。

死に神」問題 朝日回答に被害者団体不満噴出 「質問に答えてない」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080721/trl0807212116003-n1.htm

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080721/trl0807212116003-n2.htm

朝日新聞夕刊のコラム「素粒子」が計13人の死刑執行を指揮した鳩山邦夫法相を「死に神」と表現した問題が、尾を引いている。被害者を侮辱しているとして、犯罪被害者団体が朝日に2度にわたって投げかけた質問に対する回答への不満が、くすぶっているからだ。コラム掲載から1カ月が経過したが、死に神問題は、着地点が見えないままだ。(森本昌彦)

 「まったく質問に答えていない。被害者の言うことだから、聞かなくていいと考えているのか」

 死に神の意味について2度、質問状を送った「全国犯罪被害者の会あすの会)」代表幹事、岡村勲弁護士は、こう憤る。岡村弁護士は平成9年、自身への逆恨みで妻を殺害された経験から、被害者救済運動を始めたことで知られる。

 死に神という表現は、鳩山法相を揶揄(やゆ)するだけでなく、死刑囚の刑執行を希望する被害者側をも侮辱していると、6月25日、「抗議および質問」と題した文章を送った。

 朝日から、すぐに回答がきたが、あすの会は「質問に答えていない」と、再び質問状を送付。7月14日付でまた回答が届いた。

 鳩山法相は昨年9月の会見で「半年以内に死刑は執行されなければならないという規定が、自動的に進む方法はないのか。ベルトコンベヤーといってはいけないが」と発言していた。

 朝日の回答はともに、死に神という表現が、こうした法相の過去の「言動を踏まえた」ものと指摘。あすの会が求めた死に神の意味には答えていない。

 岡村弁護士は「法相が死に神なら、死刑執行を願っている被害者や遺族も悪い意味を持つ死に神になってしまう」と“問いかけ”の真意を打ち明ける。その上で「とにかく正直に答えてほしい。答えられないのなら『不愉快な思いをさせた』とおわびをするべきだ」。あすの会は23日に会見し、今後の対応を発表する予定だ。

ほかにも、「地下鉄サリン事件被害者の会」や全国の犯罪被害者支援団体でつくる「全国被害者支援ネットワーク」が抗議文を朝日に送付。「地下鉄〜」の代表世話人、高橋シズヱさんも「多くの人を傷つけたのであれば、謝罪をしなければいけない。コラムの筆者もきちんと責任を持って、説明すべきではないか」と指摘する。

 鳩山法相は産経新聞の取材に「遺族は極刑を望み、死刑が執行されれば正義が実現されたと考える。それが(正義でなく)、死に神が死刑囚を死の世界に連れていったというのなら、(誰も)浮かばれない」と述べ、「私にわびる必要はないが、遺族には真剣にわびてもらいたい。遺族の問いにはもっと正面から答えるべきだ」と話している。

 朝日新聞社広報部の話「今後も誠実に対応させていただく」



死に神」問題の経緯

 朝日新聞が6月18日付夕刊コラム「素粒子」で、鳩山邦夫法相について「2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神」と表現。法相が20日の記者会見で「(死刑囚は)法の規定によって執行された。死に神に連れていかれたというのは違う。(記事は)執行された方に対する侮辱」と批判した。

 その後「全国犯罪被害者の会あすの会)」が25日付で「抗議および質問」と題した文章を同社に送り、死に神の意味▽法相の死刑執行数がどうして問題になるのか−などを質問。同社は30日付の文書で「死刑執行にかかわる鳩山法相の一連の言動や歴代法相の中でも死刑執行件数が多くなっている点などを踏まえ、『死に神』という表現を用いた」「皆様のお気持ちに思いが至らなかったといわざるをえません」と回答。

 あすの会は質問に正面から答えていないと、7月7日付で再び、死に神の意味について質問。同社は7月14日付で「法に基づく法相の執行命令そのものを問題にするつもりはない。『素粒子』で取り上げたのは、死刑執行に関わる法相の発言を踏まえてのものである。批判を厳粛に受け止めている」と回答した。

死に神問題は、着地点が見えないままだ。」ということだが、「見えないまま」なのは朝日のせいだといわれれば私はそれは違うといわざるを得ない。「誠実に答えた」としても「質問に答えてない」といわれればおしまいである。“答えられないのなら『不愉快な思いをさせた』とおわびをするべきだ”という言葉を読み、これは解放同盟の糾弾闘争とどこが違うんだろう?と、私は「あすの会」を支持する気持ちを失いつつある。なんていうか…まったくもって「見失っている」としかいいようがない状況になっている。

岡村弁護士に聞きたい。こういう抗議が本当に被害者救済に役立つと思っているのか。糾弾闘争まがいのやり方が広汎な支持を得られると思っているのか。このような強硬な姿勢が犯罪被害者遺族への理解や共感につながると思っているのか。

気になっているのはここまで執拗な抗議を、「あすの会」の総意で行われているのかどうか、である。また、記事中にある三団体のうち、二団体が政府とかかわりが深い*1のも気になる。

考えていくと陰謀論になりそうなのでやめておくが、なんとも嫌な感触のする報道である。23日にどんな今後の対応策が発表されるかわからないが、このまま「糾弾闘争」を続けるのならば、それは「あすの会」の圧力団体宣言と同義語であると指摘せざるを得ない。どこへ行くのか。私が言うのは大変おこがましいことを重々承知であえていうが、もう一度「自らの原点」を見直して欲しいと強く願っている。本村氏が手記を発表した先が「文藝春秋」でも「新潮45」でもなくましてや「中央公論」でもなくそして「正論」ですらなくてあの「WiLL」だったという時点で、この流れがきまってしまったのかもしれないが。

*1:「全国被害者支援ネットワーク」の山上皓理事長は小泉政権下において「基本計画推進専門委員会議」の議長をつとめており、また「あすの会」の本村氏は先ごろ行われた衆議院山口2区補選において自民党代議士候補の応援演説をする安倍元総理に紹介され、応援演説をしたのではないか?といわれていた。ちなみに本村氏も「基本計画推進専門委員会議」の委員である。