自衛隊員がお気の毒

天皇伝説」を見、あまりのオモシロさにシビレっぱなしで今日は早く寝ようと思ったら*1こんなニュースを拝ませていただきました。

田母神空幕長を更迭=論文で「侵略国家はぬれぎぬ」−政府見解に異論
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008103101199
「空幕長という立場にいること自体問題」=問題論文に不快感あらわ−浜田防衛相
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008103101276
航空幕僚長を更迭…論文で「わが国が侵略国家は濡れ衣」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20081031-OYT1T00646.htm?from=main1
防衛相、現役空幕長を更迭 政府見解に反すると判断
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081031/plc0810312209012-n1.htm
航空幕僚長:政府見解逸脱論文、麻生政権にさらなる逆風
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081101k0000m010140000c.html

よりによって現役航空幕僚長が「侵略戦争は濡れ衣だ」なる珍論を懸賞論文に応募して最優秀賞に選ばれたそうだ。政府見解と異なる論文を書くなんてなんて反日な幕僚長なんでしょうか。誰かこれは自衛隊を貶めるための中国のスパイだとかいわないのかしら。それはさておき。自爆史観で凝り固まったとしか思えない空幕長とは。トップがこうだと末端までそうだとサヨクから攻撃されかねない自衛隊員がひたすら気の毒。トンデモ論文に賞をやるのはどこの馬鹿かと思ったら、安倍珍のAPAグループで審査委員長が渡辺昇一という「カルト」でしたか。マジレスしてすみませんでした。

以下要旨があったので転載する。

航空幕僚長>過去の戦争めぐる田母神氏の論文要旨

10月31日23時59分配信 毎日新聞

◇田母神(たもがみ)俊雄・航空幕僚長の論文要旨は次の通り。

 アメリカ合衆国軍隊は日米安全保障条約により日本国内に駐留している。これをアメリカによる日本侵略とは言わない。二国間で合意された条約に基づいているからである。我が国は戦前中国大陸や朝鮮半島を侵略したと言われるが、実は日本軍のこれらの国に対する駐留も条約に基づいたものであることは意外に知られていない。

 (中略)

 我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者なのである。

 (中略)

 もし日本が侵略国家であったというのならば、当時の列強といわれる国で侵略国家でなかった国はどこかと問いたい。よその国がやったから日本もやってもいいということにはならないが、日本だけが侵略国家だといわれる筋合いもない。

 (中略)

 当時列強といわれる国の中で植民地の内地化を図ろうとした国は日本のみである。我が国は他国との比較で言えば極めて穏健な植民地統治をしたのである。

 (中略)

 戦後の日本においては、満州朝鮮半島の平和な暮らしが、日本軍によって破壊されたかのように言われている。しかし実際には日本政府と日本軍の努力によって、現地の人々はそれまでの圧政から解放され、また生活水準も格段に向上したのである。

 (中略)

 さて日本が中国大陸や朝鮮半島を侵略したために、ついに日米戦争に突入し300万人もの犠牲者を出して敗戦を迎えることになった。日本は取り返しの付かない過ちを犯したという人がいる。しかしこれも今では、日本を戦争に引きずり込むために、アメリカによって慎重に仕掛けられた罠(わな)であったことが判明している。実はアメリカもコミンテルンに動かされていた。

 (中略)

 さて大東亜戦争の後、多くのアジア、アフリカ諸国が白人国家の支配から解放されることになった。人権平等の世界が到来し国家間の問題も話し合いによって解決されるようになった。それは日露戦争、そして大東亜戦争を戦った日本の力によるものである。もし日本があの時大東亜戦争を戦わなければ、現在のような人権平等の世界が来るのがあと100年、200年遅れていたかもしれない。そういう意味で私たちは日本の国のために戦った先人、そして国のために尊い命をささげた英霊に対し感謝しなければならない。そのお陰で今日私たちは平和で豊かな生活を営むことが出来るのだ。

 (中略)

 東京裁判はあの戦争の責任を総(すべ)て日本に押しつけようとしたものである。そしてそのマインドコントロールは戦後63年を経ても日本人を惑わせている。日本の軍は強くなると必ず暴走し他国を侵略する。だから自衛隊は出来るだけ動きにくいようにしておこうというものである。

 (中略)

 諸外国の軍と比べれば自衛隊はがんじがらめで身動きできないようになっている。このマインドコントロールから解放されない限り我が国が自らの力で守る体制がいつになっても完成しない。

 (中略)

 今なお大東亜戦争で我が国の侵略がアジア諸国に耐えがたい苦しみを与えたと思っている人が多い。しかし私たちは多くのアジア諸国大東亜戦争を肯定的に評価していることを認識しておく必要がある。(中略)日本軍に直接接していた人たちの多くは日本軍に高い評価を与え、日本軍を直接見ていない人たちが日本軍の残虐行為を吹聴している場合が多いことも知っておかなければならない。日本軍の軍紀が他国に比較して如何(いか)に厳正であったか多くの外国人の証言もある。我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)である。

 (後略)

最終更新:11月1日0時44分
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081101k0000m010137000c.html

なんつーか「マオ」から都合のいいとこだけゲットしたような日中戦争論といい、アメリカはコミンテルンによって動かされていたとか、この手の陰謀史観特有のネタだし。(この人が新自由主義者アダム・スミスの神の手を信じててなおかつルーズベルトによるニューディール政策なんてアカのやることだと思っていたら、コミンテルンによって、という妄想も抱くのもうなづける話である)もうこの類を今までに何百回読んだだろう?それこそネトウヨのコピペ含めて。

掲載した雑誌がでるそうで、ヲチ対象にしようかと思っていたが、雑誌の傾向もおそらく先行雑誌(産経新聞系列のアレ)とかぶるだろうから価値はねえかな。同じ話を何度も読むのも退屈ってのもあるけど。例えば「しかし私たちは多くのアジア諸国大東亜戦争を肯定的に評価していることを認識しておく必要がある。」これなんて、「正論」や「SAPIO」、「WiLL」あたりじゃしょっちゅう見かけるネタなので全く新味がない。新味がないにもかかわらず受賞したということはひとえに氏の肩書きだと私は思う。

それにしてもこういう場合の「多くのアジア」っていったいどことどこなんだ?中国・韓国はもとより、シンガポール(華僑大粛清やっておきながら肯定してもらえるなんて思ってないよね?)、インドネシア、フィリピン、インドも否定的な見解であったと思うのだが、そうなると彼らがいう「多くのアジア」は台湾だけとなるが、その台湾だって軍属等の扱いについては腹に一物あるわけで、あくまでも外交的パワーバランスによって「日本」に対して肯定的な見方をしているだけで、「大東亜戦争」については必ずしも肯定的であるわけではない。この人は「今の日本」を肯定することと「過去の日本」を肯定することの区別もつかないのだろうか。(付け加えるのならば捕虜虐待や慰安婦問題で、イギリスとオランダ、オーストラリアからは当然のごとく肯定なんかされてない。麻生炭鉱で捕虜や朝鮮人被差別部落民を労働に従事させていた現総理についてもその例外ではない)

でもってまたご多分に漏れず、ここでもまた「日本がアジアを解放した」「併合したおかげで韓国の生活は向上した」という論理か。いやですからね、それは結局日本によって支配されたから植民地時代と変わらなかったというか、はっきりいえば裏切り者として思われたので、なんのエクスキューズにもならない。(アジア諸国独立運動の立役者は全員が全員日本と縁があるわけではないし。ソビエトで学んだ人間もいるんだけどそういうのはスルーみたい。)韓国併合についていえば、韓国合邦のため尽力をした日本人の存在も忘れているみたいだし。なんのために内田良平は朝鮮の人々のために動いたのか、なんのために大東国男に詫びたのか。そんな問いも空しくなる今日この頃。

大東亜戦争を肯定することはその犠牲者ともいえる「一兵卒」、叩かれ、殴られ、行きたくもない戦争に無理矢理駆り出され、殺したくもない人を殺すことになった挙句に、飢餓に苦しみ草臥れた無名兵士たちを見ないようにすることであると私は思う。彼らは日本政府・軍部の犠牲者だった。その観点を忘れ、「痛み」への視線をなくし、耳に心地よいことしか聞いてないとコピペレベルの崩れた歴史認識を保持する結果となる。対等な日韓日中、他アジア諸国との関係を築くためには、己の犯した「罪」に真摯に向き合う必要があると私は思っている。こんな世迷言で自慰してるんじゃなくてさ。

*1:レビューと画像は明日あたりにup予定