「正論編集者」が考えた「ダッチワイフ専門風俗店」が流行る理由。
新聞は投書欄が面白いとは誰が言った言葉か忘れたが、その新聞がどういう傾向にあるのかは投書欄を一週間も読めばわかるというもの。そういうわけで以下のようなやりとりも、そのメディアの性格を知るためには重要なものなのです。
☆編集者へ= 兵庫県西宮市の会社員○○さん(65歳)から。(註:伏字は筆者判断による)
2月号、千石保氏の「日本の子供の心はどう荒廃したのか」、種々の示唆に富んだ文章でした。日本の若者は総じて意欲や自信に乏しいという根本的な考え方には私も同感です。戦後日本は驚異的な発展を遂げ豊かな経済大国となりましたが、子供を育てるという大事な面では手ぬかりがあったようです。それが画一的な青少年を生む結果となり個性的な若者はあまり育たなかったようです。
私の青春時代は学力第一主義でした。大学入試の浪人は考えられず、浪人は大きな人生の汚点となったものです。その後も学力優先、お受験ムードもあるものの進学に対する考え方は以前とは違って来ています。
ニートは別としてアルバイトをしながら何とか一人で生きている若者達を多く見かけます。でもこれは正常な姿ではないと思います。最近ホリエモン関連ニュース、政財界の相変わらずの不祥事等が世に溢れ若者達の人生に対する価値観を揺るがせています。また、千石氏は親子関係に言及し、親の自立を説いておられます。核家族化というのも日本の住居や生活環境を考えた末でのやむを得ぬ選択だと私は思います。互いに相手の事を考える物心両面での余裕がないのです。長寿国日本では自分自身の生き甲斐を見つけて生き延びていくのがベターだと思います。私はそう思って後半生を生きて行く覚悟をしています。
まあ朝日でも毎日でもこういう投書はよく見かけますな。善良な一市民が「最近の若者は覇気がない画一的だ。でもそれは時代の趨勢によるものかもしれない」という軽い愚痴を投稿したわけですが、なにせ投書した先が悪かった。なにしろ雑誌「正論」だったんだから。当然この投書に対する編集部からのお返事が斜め上をいっていたんですが、まあ投稿主もびっくりだろうな。いくら「正論」とはいってもまさかこんなこといわれるとは予想だにしてなかっただろうに、まさに暗闇から牛である。とにかく黙って読んで欲しい正論編集部の回答を。
http://www.sankei.co.jp/seiron/wnews/0802/hen-hen1.html
★編集者から=
同じ二月号にあった、カメラマン・宮嶋茂樹氏とアルピニスト・野口健氏との対談「去勢された若者たちに告ぐ」の中に、面白いくだりがありました。「ダッチワイフ専門の風俗店」が流行している、というのです。話が“下(しも)がかって”申し訳ないのですが、これこそ現代の若者たちの様子をズバリ反映させた現象だと思わずヒザを打ちました。
今の若者の多くは、軽い“対人恐怖症”にかかっており、他人とのコミュニケーションの機会をできるだけ少なくしたい、と考えているようです(もちろん例外はあります)。だから、買い物は、言葉を発する必要がないネットショッピングやコンビニで済ます。風俗へ行きたい欲望はあるが、女性と話すのはイヤなので「ダッチワイフ専門店」へ、となるわけです。
かつて、ニートの若者(男性)をインタビューしたとき、女性との交際経験について聞いたことがありました。彼は「交際経験はあるが、面倒くさくなって別れてしまった」と言い、「できれば結婚はしたくない。子供もいらない。そんなことになれば、責任を持たなくちゃならないじゃないですか」と、平然と答えたので、あまりの価値観の違いに呆然とさせられたことを覚えています。
できるだけ社会や他人と関わらずに居たい。家族も必要ない。老後のことは、その時になってから考えたらいい…。同じ二月号で小堀桂一郎さんが「凛々しい若者の顔」「たおやかな女性」を最近、見かけなくなった、と嘆いておられました。日本の将来を考えると背筋が寒くなります。
松田優作なら「なんじゃこりゃああ」と絶叫して草臥れるようなこの回答。なんつーか軽い愚痴がダッチワイフ専門の風俗店があるんだよ☆なんていう論理展開を導くあたりに、朝刊一面で「セックスレス」の話題を堂々と展開してたり何の関係もない話しの結末をいかにして民主党批判・中共北朝鮮攻撃に結びつけるかで汲々としている産経抄がなぜ産経抄足りえているのかの一端を見る気がする。こんなこと書いて投稿主が未知の世界に目覚めたらどうしよう。それはさておき。
この「編集部の返事」自体、まさに思慮分別にかけた最近の若い人を具現化したような内容だが、不肖宮嶋もこんな軽い与太話がまさかこんなことになろうとはと驚愕していることだろうなあ。野口健も名前だけ出されるだけでダメージだろうな。「だから、買い物は、言葉を発する必要がないネットショッピングやコンビニで済ます。」といわれても、どこぞの新聞社が「翼賛」していた「格差社会」のため、忙しくて買い物することができずにネットで済ますとか手をかけた食事を作ることが出来ないからコンビニで済ますなんてこともあるだろうし、あるいはこれまたどこぞの新聞社もがんばって追求していた食の安全意識が高まった結果、産地直送や無農薬を謳ったネットショッピングで購入ということもあるだろう。「対人恐怖症だから」なんていうわけのわからん結論を導き出す前にもっと考えることはあるような気がするが、しかしそのことと「ダッチワイフ専門風俗店」がはやる理由はなにひとつ関係ないと思うぞ。
というかこれは好事家な皆様にお聞きしたいのですがそもそも「ダッチワイフ専門店」って流行っているのか?高級ダッチワイフ、いわゆるラブドールがかなり売れているらしいというのは聞いたことあるけれども、それは個人愛玩用であって、集団愛玩用と同列に語ることは違うと思う。つーか汚くねえのかねえ。前任者つきダッチワイフですよ?生身のニンゲンなら潔癖症気味の方以外あんまり露骨にその辺のことが表出されるわけではないだろうからアレとしても、ダッチワイフだもんなー。お使いになれた様子に胸ときめきなんつー一味違う個性をお持ちの方以外は難しいような気がするのだがどうだろう。でもゲイな方のネタとかあれやそれやを読んでいると(以下自主規制)とまあ、未使用洗い立てばかりがいいとは限らないようなのでこれはこれでアリなのかもしれないけれども。でもたぶん「正論編集部」が思い込んでいるような理由はあんまり該当しないと(弱気に)断言できるように思いますがこはいかに?
まあとまれこんな解読不能な解釈を開陳して悦に入る前に、
同じ二月号で小堀桂一郎さんが「凛々しい若者の顔」「たおやかな女性」を最近、見かけなくなった、と嘆いておられました。日本の将来を考えると背筋が寒くなります。
結末にこのテの言説を盛り込めば、荒野のダッチワイフだろうがなんだろうか、なに書いても許されると思ったら大間違いだぞ。「ダッチワイフ風俗店」と同等レベルで日本を憂いているんじゃねーぞバーカ。産経および「正論」は、馬鹿文章を垂れ流す前に、日本の将来を脅かす一員たる重責を担っていることを少しは自覚したほうがいいと思う。だいたい親から言われたもんですよ、差別発言とか人の悪口ばっかりいってると顔がゆがむよって。いやどこぞの閣僚について述べているわけではありませんので、ええ。